2006年01月17日

超殺人事件−推理作家の苦悩:おめでとうございます。

前回、「言壺」に関する文章で、叙述支援ソフトのことを若干書いてみた。それから東野圭吾の「超・殺人事件」という短編集のことを思い出したところ、本日、東野圭吾が直木賞を受賞したというニュースが流れ…なんとなく書くことも無いのに書棚にあった東野作品を取り上げてみる。

この短編集には、いろんな戯画化された推理小説家がわんさか出てくる。ある小説家は税金対策のために、連載中の小説のプロットを捻じ曲げ自分のハワイ旅行やリフォーム費用を経費で落とそうとしたり、理系の薀蓄をこれでもかと言うほど詰め込んだ怪作とか、高齢化社会の影響として読者も作家もみんな呆けてしまった推理小説業界の話とか、読者の代わりに本を読んで、それのあらすじと評価と書評をでっち上げてくれる機械がついには文学賞の傾向と対策を作ってくれる「超読書機械殺人事件」などがある。

東野圭吾は、きわめて器用な作家で、「悪意」みたいなきわめて「心理」的な作品を書くこともできるし、「白夜行」や「秘密」みたいなセンチメンタルな作品、「どちらかが彼女を殺した」のようなきわめて緻密な犯人当てパズラー、「あの頃ぼくらはアホでした」のような爆笑青春エッセー、「名探偵の呪縛」や本書のような推理小説・業界の約束事をパロディにして笑うということができる。間口の広い作家だ。

その中でも本書はきわめて異質で、「名探偵の呪縛」では推理小説のお約束をパロディにしたのだが、今度はそれ以上に推理小説を取り巻く人々をパロディとした。曰く、「日本推理作家協会、除名覚悟!作家、書評家、編集者みんなまとめてメッタ斬り」らしい。直木賞に初めて落選した頃に書かれているので、実はそれが理由だったりするのかもしれない。類似作の竹本健治の「ウロボロス」シリーズは実在の推理作家を登場させて笑いを取る趣向だが、本作はそれでもなく、推理業界のお約束を笑うのだから実にマニアックだろう。

…面白いのだが、書くことがない…。とにかく本日のテーマはたった一つ。東野さんおめでとう。七年目の正直ですね。
posted by 白紙状態 at 22:22| ソウル | Comment(1) | TrackBack(1) | Mutter in the Reading Room | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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