2005年12月03日

たんぽぽ娘。:なんとなく私は彼女に恋をした

たんぽぽ娘(原題:The Dandelion Girl)。ロバート・F・ヤング作。リリカルなタイムトラベル系のSFの名を上げる場合(こんなこと人生において一度か二度くらいしかないと思うのだが…)、そのトップ10に入らなければおかしい作品である。逆に、これをトップ10にあげないのはモグリのSFファンである。本稿の題名に「。」をつけた理由をいうのは野暮だと思う。

日本では「海外ロマンチックSF傑作選2」や「アンソロジー 人間の情景 6」などのアンソロジーに収録されているらしい。しかしおそらく両方とも絶版だろう。ちなみにそういった絶版本の復刊交渉に励む復刊ドットコムでは、「海外ロマンチックSF傑作選」の復刊投票をやっている。100人の投票があり、もう出版社に要望のメールを出したらしいので、もうその必要がないかもしれないが、いちおうここでチェックできる。(SFマガジン2000年2月号に再録されている:出版社にバックナンバーがないのだけれど…)

ちなみにネット上には英語のやつもあるし、内容も短くそんなに難しい英語じゃないから、暇なときに読んでみるのもわるくない。

<ここからネタバレあり:でも、ネタを知ってたところでこの短編の真価か変わらないはず>


きわめてベタで甘いSFである。ある日、中年になった男は、例年なら妻と一緒にすごすはずの休みを一人で過ごすことになる妻が陪審員になったからである。そして山の中の、湖のほとりで過す休暇のひと時を楽しんでいたとき、ある少女と出会う。タンポポにもにたブロンドの純粋さを絵に描いたような少女と。彼女は自分が未来から来たといい、男はそれを冗談半分のうそだと思う。

彼女は「Day before yesterday I saw a rabbit, and yesterday a deer, and today, you.」(二日前、ウサギをみたわ。昨日は鹿、そして今日は、あなた)という。これは結構有名なせりふで、かなりあっちこっちで引用されているはずだ。

初秋の日差しが木の葉に反射して、森のあふれんまかりの柔らかな緑色の光で満たされるころ、男は少女と何回か出会いを重ねる。ある日、少女は去り、男は帰ってきた妻を迎える。そしてある日、偶然、その少女が自分の妻の昔(ややこしいな)の姿だと言うことに気づく。

タイムマシーンの故障で最後の一回しかタイムトラベルができなくなった少女は、もっと昔へと向かい、若き日の男と出会い、恋に落ちたのだ。

こんなストレートな話はもう誰も書くことがない。しかしこの短編が書かれたのは1961年のことで、まだSFはその可能性を模索していたころだ。だからストレートに感傷的(センチメンタル)な「たんぽぽ娘」なども(おそらく)前例のあまりない作品として向かいいれられたのだろう。だからこそ読んでもらいたい。この短編は可能性を模索している厨房(なぜかここだけネット用語)にこそ読んでもらいたい。そして萌え苦しんでもらいたい。


今ならこの素材でもっといろいろいじり倒した作品になるのだろう。そう、この物語はいろんな視点からみることができる。たとえば妻の視点。未来の自分が夫に出会うことを知っている彼女は、陪審員に選ばれて出かけるときになんとなく昔のことを思い出し笑みを浮かべる、なんていうのもいい。自分はなぜ「自分が夫と最初に出会ったとき@彼女の主観」に夫と一緒にいなかったのだろう?と悩んだりもしたのだろう。

これが今風の萌え系のライトノベルになるなら、最後まで真相を明かさないことはない。むしろ、最初から結婚を決意した「妻」が登場し、彼女が若き日の主人公に「好きです」状態で突撃するのが正しいのだろう。そして理由は後から説明される。未来の自分にほれた同年代の美少女がタイムトラベルで自分の元に来てラブラブ状態だなんて普通、普通。

「たんぽぽ娘」的設定&センスをいじくりまくって物事をごちゃごちゃにして、私をしてたんぽぽ色の服を着た美嶋玲香に萌え殺しにさせたのが例のアニメ「ラーゼフォン」だったような…。




今回からFurther Reading(関係のありそうな本)を何個かピックアップしていきたいな、と思います。

Further Reading
1.「ある日どこかで」:映画にもなっている「Somewhere in Time」の原作。切ない恋のタイムトラベル
2.「ラーゼフォン蒼穹幻想曲」:アニメ版より面白いゲーム版
3.「時の鳥籠」:「たんぽぽ娘」の設定を現代に置き換えたらこういうことになります。
posted by 白紙状態 at 06:10| Comment(0) | TrackBack(0) | Mutter in the Reading Room | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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