2005年12月23日

フランスの外交力−自主独立の伝統と戦略:ただフランスであること、それだけのこと

前回は、読んでもいないのに「クーリエ・ジャポン」を評価してみたりしたのだが、今度はちゃんと読んでから書くことになった。だけど内容的には前回とあまり変わっていない。今回は、「フランスの外交力−自主独立の伝統と戦略」である。

前回はフランスのクーリエ・インターナショナルと契約して、世界各国の1000個のメディアからニュースを配信してもらって、それを再編集して、日本語に訳する雑誌の話だった。今回は、「フランスと外国」というキーワードに沿う本を紹介してみたいと思った。それが「フランスの外交力」という本である。決して、一ヶ月もこのカテゴリを更新できないでいたので、手当たり次第に新刊を適当に探してきたわけではない(2005年9月初版)。

21世紀序盤を生きる私たちにとって、「フランスの外交」とくればイラク戦争開戦時にアメリカに猛反対したフランスの姿を思い浮かべることが当たり前である。そしてそれはアメリカを含めた世界のいろんな国において、フランスの評価を盲目的に上げることになった。だけど一昔前に「アメリカ最高」といっていたあのときのやり方と何が違うのかわからない。もっと対話が必要である。肯定でもなく、否定でもなく、直接的なベネフィットだけを求める(Seeking)わけでもなくとも、ただ他人として、ただ隣人として、ただ人間として、もっと向き合うべきであり、彼らの問題を彼らの言語で聞けたらなんて素敵なのだろうか。

だけどそれは非常に疲れることだし、実際、ほとんどの人々にとっては無理だと思う。大体、そういった「アメリカの一国主義」を批判している人々の言説が往々、「アメリカこそが悪の枢軸」といった単細胞的皮肉・攻撃のレベルでしかなく、そこにはアメリカを理解しようとする切実な努力などないということから証明可能な話だ。イスラム教徒がみんなテロリストではない、といった人がキリスト教原理主義がすべての理由であり悪である、と断言しているのが、現在の私たちの世界でおきていることである。このように「相互理解」をレトリック以上レベルで実践している人々の数は案外、少ない。

これはイラク戦においてのアメリカが正しいか間違っているかの問題ではない。それをシンプルな善悪と陰謀論で理解しようとしている人々に「相互理解」というタームが占有されていることが問題なのだ。無論、イラク戦におけるアメリカの態度を批判しようとするとき、アメリカの事情を聞き共感するのが邪魔になるかもしれない、だから聞く耳を持たないのがよいかもしれない。それは否定しない。何かを成すためにあえてトレードオフのことを無視するのもある種の戦略であり、それを否定するつもりは、ない。

だけど「相互理解」というタームがそういう人々にとらわれ、本来の役割をちゃんと果たせないこと、それが問題なのだ。理解が尊いものでないのかもしれない、理解しないというのも善の実行にとって必要なのかもしれない、理解できなくとも生きていけるかもしれない、なのになぜわれわれは他国を理解しようとするのかを考えなければいけない。すべての虚言を排除した後に現れる純粋なエレメントに理由を求めなければいけない。非常に微妙なことを繰り返し念を押していうことになって、思っていたより長くなった。唐突だが、実は、この本は、私が考える「理解」のひとつの方法を象徴するよい例だと思われる。

本書の著者である山田文比古は、日本外務省のフランス専門家のようで、フランス留学経験も豊富であり、現在は駐フランス公使だそうだ。彼の叙述の仕方は、きわめて理知的であり、いろんな事実を並べ立て、それがフランスの外交史のうえでいかなる評価を受けているのかをちゃんと書き記している。それは簡単そうで結構難しく、バイアスをなくすことは至難である。彼はフランスと外国のプレーヤーたちがいかなる思想に基づき、いかなる行動を行ったのかをきちんと描く。たとえばイラク戦争前夜、フランスの行動はどんなものであり、それはどんな思想に基づき、どんな賛否両方の評価を受けたのかをきちんと書けている。

フランスを持ち上げるわけでも、フランスを見下すわけでもなく、ただそこにある理解の対象としてのフランスを見ている。国際政治に興味がある人なら必読の書であると私は思う。どんな理想があり、どんな嘘があり、どんな遂行があり、どんな賛否があるのか、知るべきなのだ。一方主義的な善悪のつけ方を望んでいないのなら。そしてフランスという国を理解するために、この本は読まれるべきだ。

でも、おそらく、この時勢とサブタイトルと出版社のマーケティングによって、本書は冒頭で批判したような「自分では多様なる世界を見ているつもりが、実は親米か否かばっかり考えている人たち」に読まれ、著者の意図が捻じ曲げられていくのだろう。フランスなんて力の無い一方主義であることは著者も遠まわしに言っていることであるし、日本がフランスを見習う必要などないとも明言しているのに、アマゾンの書評にはどうしょうもないやつが一つだけ載っている。


Further Reading

うちの本棚にはフランスの話も外交の話もあまりないので、今回はとくになし。

もしくは、クリスマス・カードをもう一度読み直してください。Merry Christmas。
posted by 白紙状態 at 18:02| Comment(0) | TrackBack(0) | Czytelnik | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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